五感のキオク~好みの彼に出会ったら~
*****

ある日、エントランスを歩いていると「おつかれさまです」と後ろから声をかけてきたのはあの時の彼。


おつかれさま、とも、こんにちはとも言葉をかけるのをためらった。

私はあの時、たった一度だけお茶を出しただけ。

それ以来は全く接点もなく、見かける事さえなかったのだから。


「あ、」

「すみません、急に声かけたりして」

「いえ」

「前にお会いした時にとても印象に残っていたので、すっかり自分の中では知り合いのつもりでいました」


そう言って照れくさそうにする仕草もなんとも私の好みから外れない。



この人は私をどうしたいんだろう。

これ以上私を翻弄させている事に気づいて居るんだろうか?



そこに同僚の彼が現れた。

そして、「よ、これから飲みに行くんだけど、おまえも一緒に行く?」


あっさりとそんな事を言う彼の意図がわからなくて戸惑う。


この前、ともに共有した欲は何だったのか。

それに彼に興味がある私をどうしようと言うのか。
< 10 / 24 >

この作品をシェア

pagetop