五感のキオク~好みの彼に出会ったら~
日本語としてうまく頭の中に入って来ないその言葉を流し、突然もたらされた彼との時間を楽しもうと。


「初めて会った時、君に見つめられて…」


見つめたわけじゃない。

ただその瞬間時間が止まってしまっただけ。

それを彼本人に説明するのはさすがに……


「いえ、あの時。普通ならすみませんと皆さんは言うんです。けれど貴方はありがとうと言った。だからちょっと驚いて見てしまったんです」



それは嘘ではない。

すみませんと言われるよりも、ありがとうと言われる事にどれだけ喜びを感じるか。

素直にその言葉がとても嬉しかったから。


「そう、ですか。見つめられたと思ってこっちはドキドキしてたんですけどね?」


自嘲気味に笑う彼に、本当はそっちの方が正解なんだけどと心の中で思う。



今日は金曜。

まだ早い時間だったため。これからバーに飲みに行こうという話になった。


とりあえず今の居酒屋を出る事に。
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