五感のキオク~好みの彼に出会ったら~
「それじゃあ、僕が口説いても?」
彼がそう言った瞬間、時が止まった。そんな気がした。
ともかく私に限っては、好みの彼が言った一言に驚きを隠せない。
「また、そんな事言ってみんなにそんな事言っちゃダメですよ?若い子は本気にしちゃいますからね?」
そう言って彼をけん制する。
「心外だなぁ。少なくとも貴方に関しては本気ですけどね」
彼の真剣なまなざし。
それをどう受け止めていいのか……
「なんだ、お互いに興味ありなら俺、帰りますよ?」
「え、何言って―」
「本気で口説いても?」
彼がもう一度聞いた瞬間、同僚の彼は立ち上がっていた。
「じゃ、ごゆっくり…」
その後姿にかける言葉もない。
ただ呆然としていると「さて、」と声が聞こえてきた。
そして、
「邪魔物は居なくなったし、」
ジャマモノ?
居なくなる?
誰が?