君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
Stage.9 WHAM! Last Christmas2
少し前のことになるけれど、澪音に


「クリスマスはどうするんだ?」


と聞かれて答えに困った。どうすると聞かれても、できれば澪音と一緒に過ごしたいと思って夜は予定を空けているんだけど……。


「実家に帰らなくていいのか?」


そう聞かれて、やっと澪音の意図を理解する。オーストリア暮らしの長い彼にとって、クリスマスが恋人同士のイベントだという認識は無いんだ。家族で過ごすものと思っているに違いなく、その澪音らしい微笑ましさにちょっと笑ってしまう。


「実家には帰らないですよ。澪音は仕事ですか?」


「そうなんだよ……。クリスマス休暇も無いなんて、日本は本当に働き者の国だよな」


「ふふふ、そうですね。私もバイトしますし」


澪音が仕事なら、私もクロスカフェで働こうと予定を切り替える。店が忙しい日だから、シフトを入れて貰うのは簡単なはずだ。


「ウィーンのクリスマスって、クリスマスマーケットが開かれるんでしたっけ?

宮殿までライトアップされるなんて、まさにおとぎの国の世界ですよね」


「そうだな。市庁舎前に大きなツリーが運ばれてきて、屋台が並んで、街全体に光があふれて綺麗なんだ。

それにしても柚葉、意外とウィーンの事情に詳しいんだな。行ったことあるのか?」


「いえいえ、私は全然知らないんですけど、常連のお客さんが詳しくて。教えてくれたんで」

「そっか。それなら、いつか柚葉とゆっくりウィーンのクリスマスを堪能したいな」


それが、澪音と私のクリスマスについての会話だった。
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