君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
* * *

あれから数日後、クロスカフェで食事休憩を取っていると、オーナーが賄いと一緒に小さなケーキを出してくれた。


「有坂さん、今日は何だか……負のオーラが凄いね。

事情はわからないけど、とりあえずたくさん食べて元気出して」


「うぅ……ありがとうございます。

でもここで『どうしたの?』とは聞いてくれないのが、オーナーですよね」


「冷たいって?

……悪いけど俺は恋愛相談とかはよくわからないから」


「事情はわからないけどって言いつつ、少なくとも恋愛絡みってことはわかってるんじゃないですかー!」


オーナーが優しいのを良いことに、私はほとんど八つ当たり気味に話を向ける。


「悪い、悪い。

有坂さんの場合は澪音がウチの店に来ることがあるから、拗れてるときは大変か」


オーナーが思案するように言った。私と澪音がちょっとしたケンカでもしていると思っているのかもしれない。


「いえ。多分今後はずっと来ないですよ」


「そうなの!?」


「ごめんなさい、お店の大事なピアニストが私のせいで来なくなっちゃって」


「もともと彼が気晴らしに来てただけだから、それはいいんだけど。

でも、ついこの前まであんなに仲が良さそうだったじゃないか。

澪音は良い奴だから、あっさり終わらせるのは勿体ない気がするけど」
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