君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
Stage.4 樫月澪音 Waltz for Yuzuha
さっきまでよく晴れていたのに、ランチが終わった後にはすっかり大雨になっていた。

今は澪音の部屋に二人きりで、窓に強く打ち付ける雨を眺めている。


「澪音って物凄いピアニストだったんですね……。本当なら世界中でコンサートをするような人だったのかも。

さっきの演奏も、お店とは全然雰囲気が違って素敵でしたし……とにかく圧倒されました」


「ふーん、そのわりにはあまり聞いてなかったよな」


「え?」


澪音の声が予想外に低く乾いているので驚いた。


「別にBGMにされても気にしないけど……、

ひとつ言っておくと、兄さんを好きになっても無駄だよ」


真顔でそんなことを言うのでしばらくの間、口を開けて固まってしまった。


「絶っっ対、そんなことはないんですけど!

私、正直に言うと弥太郎さんは苦手です」


「どうかな。初対面とは思えないくらい打ち解けてたよう
だけど。」


「大した話してないですよ、澪音との関係を反対されていただけ」


「『弟ではなく俺にしろ』とでも?」


澪音が私に覆い被さるように抱き付いてくる。


「まさか!そんなわけないじゃないですか。

変な妄想しないでください。

あと、こういうのは困ります……」


「今は頭突きされても離さないから。

兄さんにはかぐやがいるから柚葉は側妻にしかなれないよ。

俺は兄さんより劣った存在だけど、柚葉が兄さんに惹かれるのは見過ごせない」
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