君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「劣ったなんて言わないでください。違いますよ。

私に自信持てと言うくせに、澪音の方がずっと卑屈じゃないですか!」


「柚葉には、分からないよ」


澪音が私の両手に指を絡めて手を繋ぐ。

大きな手。長くて華奢な指。

あの美しい演奏をする手と、私を包み込んでいる温かな手は同じなんだと思うと不思議な気持ちになる。


「少なくとも、澪音と弥太郎さんは全く違う個性じゃないですか。雰囲気も、話すことも何もかも違う」


「兄さんは声が出せないのに、もうそんなにたくさん話したんだ。

俺と何もかも違うと思うくらいには、兄さんのこと理解したんだな」


沈んだ声も、話してることも全然澪音らしくない。


「澪音……、お兄さんにコンプレックスでも?

誰かがあなたとお兄さんを比べるんですか?

そんなこと意味ないのに……」


「柚葉は俺を慰めてくれようとしてるのか?」


そう言った澪音は、私の耳を唇で挟んで、舌をつけた。


「……っん!

やっ……私が澪音を慰める理由なんてありません。離してっ」


「柚葉が嫌なら、無理強いしないよ」


「もちろん嫌ですっ! 私は恋人代行なんですから」


「今、それを言うなよな……。

嫌ならしないけど、でも今日は帰さない。」
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