君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「駄目だ。許さない。

君の魅力を理解できないような馬鹿な男のために、柚葉が悲しむことなんかないんだ」


澪音は私の頭に手を置いて、澪音の肩に乗せるように傾ける。堪えきれずに嗚咽を漏らした私にそっと触れるように抱き寄せて、そのまま私の涙を受け止めてくれた。


そうした優しさの全てが、澪音を忘れられなくさせてるというのに。


澪音にとって私は、どんな存在なんだろう。私に会ったことが大きな出来事だと言っていたけれど……


* * *


そのまま、なだめられるように眠りについて、朝早く目覚めてみると澪音はまだ隣で眠っていた。

朝一番に見るには、心臓に悪いほど綺麗な寝顔。だけど、


「カノン……」


と笑顔で寝言を言ってるので、何とも締まりがなくて可愛らしい。


「ふふ、カノンって確か澪音が飼っているワンコだっけ」


今朝も幸せな夢を見ているようだ。


でも、こんなにフワフワと柔らかな性格の澪音が当主になって大丈夫なんだろうかと他人事ながら心配になる。やっぱり、弥太郎さんの方が性格的には当主向きなんだろうな。


このままずっと寝顔を見ていたい気持ちになるけれど、澪音が目を覚ます前に急いでベッドを抜け出した。


私の方は寝起きの顔なんてむくみや寝癖で見れたものじゃないのだ。澪音に見られるのはできるだけ阻止したい。急いで身支度を整えて、今日の予定に備えた。今日からは、恐れていた謎の花嫁修業が始まる……。
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