君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
背後から澪音が戻ってくる気配がした。


「澪音。これ、早く取ってくださいっ」


と訴えても、私が縛られている椅子の前に腰を下ろして、じっと私を見上げるだけだ。


澪音はカジュアルな印象のデニムをはいていたけれど、上半身は何も身に付けていなかった。服の上からは線が細く見える体型だけど、二の腕や胸板、腹筋に付けられた均整のとれた筋肉が視界に入り、思わず目を逸らす。


「上も何か着てください……」


「自分はバスローブだけで男の部屋をうろついてたクセに」


「ほどいてくれたら、ちゃんとした服に着替えますから」


「駄目」


澪音はいつも笑顔でいることが多いので、真顔でじっと見つめ続けられると、どうにも落ち着かない。

さっきじたばたと足を動かしたせいで、太ももが上の方まで見えてしまっているから余計に気になる。手を縛られているから直すこともできないのだ。


「俺は一度だって、柚葉を身代わりと思ったことなんかない」


澪音は私の右足を軽く持ち上げ、足の甲に唇をつけた。そんなところにキスされるとは思っていなかったので、全身がビクッと震えてしまう。


「やめてください、足になんて」


「本気で嫌なら、俺の顔を蹴っていい」


そう言われても、そんなことできるわけがない。ただじっとしていると、もう一度唇がつけられた。


「確かに俺はかぐやを好きだったけど、それは随分と昔の話だ。

幼いころの思慕とか、十代の頃の恋愛とか。誰にでもあるものだ。柚葉にもあるだろ?

それだけの事だよ」
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