直さんと天くん

例の強盗事件の日、警察から聴取を受けた際に防犯カメラが壊れていたことがわかった。
映像は、強盗が私に刃物を突き付けたあたりから砂嵐のように乱れ、ぷつりと途切れていた。

古い機械でもないし、直前まで問題なく動いてたのに、不思議なこともあるもんだ。
あの晩は店内の照明がチカチカ点滅したり、入店チャイムも鳴らなかったし、電気系統のトラブルか…?謎だ…。



休み明け、出勤。

「本当に大丈夫なの?もう1日くらい休んだら?」
「家にいても暇で暇で…」

心配する浜路さんに苦笑しながら言う。

「直ちゃんが休んでる間にね、お店で変わったことがあって。入金後のお金がいくらかなくなったんだって。大きな金額じゃないから、オーナーがなんとかしてくれるみたいだけど」
「へえ…そうだったんすか…」


不思議なことがまた一つ増えた…と思っていたら、さらに不思議なことが起きた。



天くんが店に現れなかった。

前にも勤務時間中は来なくて帰り道に現れた時があったけど、その日は結局帰宅するまで現れなかった。

そんな日もあるか。

むしろ今まで私がシフトの日に来てたことの方が不思議か…。

シフトどころか、住所を知らないはずのばあちゃんの家に現れたときもあった。あれはいまだに謎だ…。

そういえば、天くんがケータイ持ってるとこ見たことないな。
デートに誘うくせに連絡先は一度も聞いてこなかった。

振り返ってみれば、初めて会った日からずっと天くんが会いに来てくれるのを待っているだけで、私から天くんに会いに行ったことがなかった。


前に話したとき、大学は高瀬大に通ってるって言ってたな…。

会いに行ってみようかな…。
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