宵の朔に-主さまの気まぐれ-
幽玄町に住む者たちは、夜半を過ぎると一切外出をすることはない。
元々彼ら及び彼らの血縁の者が罪を犯したため流された場所がこの幽玄町であり、幽玄町を仕切るのは妖だ。
古来より定められた決まり事として、元々罪人である彼らがさらに幽玄町で罪を犯した場合、百鬼によって食われる――それが末路となる。
だが心を入れ替えて真面目に暮らしていれば、彼ら百鬼がむやみやたらに理由もなく人を食うことはない。
住民たちは夜は固く戸を閉じて百鬼夜行が空を行く毎夜は外には出ない。
例え多少大きな物音がしたとしても。
「雪男さん、それ絶対落とさないで下さいねっ」
「んなこと言ったってこれ重たい…」
その夜半を狙い、柚葉は雪男と非番の百鬼たちに手伝ってもらって、今まで苦労して作り続けてきた品物を店に運び入れていた。
がたごとと音がしたとしても住民が家から出てくる気配はなく、ただ息を潜めているのは分かった。
「これをここに置いて、と…」
店内はあまり広くなく、どう陳列すれば沢山の品物を飾ることができるか――わくわくしながらそれらを決めてひと段落すると、柚葉は住まいにしようとしていた二階に上がって雪男と休憩がてら茶を飲んだ。
「こうして雪男さんと二人で話すことってあまりなかったかも」
「ん、そういえばそうだな。そうだ柚葉、お前輝夜の嫁になるんだから、これから知っておかなきゃいけないこととかあるから腹を括れよ」
「知っておかなきゃいけないこと?」
――あの屋敷には何か秘密があるとは分かっていた。
だが部外者の自分がそれを訊いてもいいのか…いいはずがないと自身を律していたため、今までそれを訊くことはなかったが…
「地下の…こととか?」
「おお、知ってたか。そうなんだ、鬼頭の者が守らなきゃいけないもの…そういうのを先代か主さまが教えてくれると思うから。あ、輝夜でもいっか」
おまけのように言われて笑った柚葉は、明日の開店日に思いを馳せた。
祝言は七日後――
店の開店日は明日――
ようやく自分の店が持てる。
朔や輝夜たちに心から感謝して、笑みを浮かべた。
元々彼ら及び彼らの血縁の者が罪を犯したため流された場所がこの幽玄町であり、幽玄町を仕切るのは妖だ。
古来より定められた決まり事として、元々罪人である彼らがさらに幽玄町で罪を犯した場合、百鬼によって食われる――それが末路となる。
だが心を入れ替えて真面目に暮らしていれば、彼ら百鬼がむやみやたらに理由もなく人を食うことはない。
住民たちは夜は固く戸を閉じて百鬼夜行が空を行く毎夜は外には出ない。
例え多少大きな物音がしたとしても。
「雪男さん、それ絶対落とさないで下さいねっ」
「んなこと言ったってこれ重たい…」
その夜半を狙い、柚葉は雪男と非番の百鬼たちに手伝ってもらって、今まで苦労して作り続けてきた品物を店に運び入れていた。
がたごとと音がしたとしても住民が家から出てくる気配はなく、ただ息を潜めているのは分かった。
「これをここに置いて、と…」
店内はあまり広くなく、どう陳列すれば沢山の品物を飾ることができるか――わくわくしながらそれらを決めてひと段落すると、柚葉は住まいにしようとしていた二階に上がって雪男と休憩がてら茶を飲んだ。
「こうして雪男さんと二人で話すことってあまりなかったかも」
「ん、そういえばそうだな。そうだ柚葉、お前輝夜の嫁になるんだから、これから知っておかなきゃいけないこととかあるから腹を括れよ」
「知っておかなきゃいけないこと?」
――あの屋敷には何か秘密があるとは分かっていた。
だが部外者の自分がそれを訊いてもいいのか…いいはずがないと自身を律していたため、今までそれを訊くことはなかったが…
「地下の…こととか?」
「おお、知ってたか。そうなんだ、鬼頭の者が守らなきゃいけないもの…そういうのを先代か主さまが教えてくれると思うから。あ、輝夜でもいっか」
おまけのように言われて笑った柚葉は、明日の開店日に思いを馳せた。
祝言は七日後――
店の開店日は明日――
ようやく自分の店が持てる。
朔や輝夜たちに心から感謝して、笑みを浮かべた。