宵の朔に-主さまの気まぐれ-
今夜だけは無礼講だ。

非番の百鬼までも集まり、庭は彼らで埋め尽くされていた。

酒はものすごい速さでなくなり、踊る者、笛を奏でる者、泣く者、酔いつぶれる者――ある意味阿鼻叫喚の地獄絵図が庭で繰り広げられていて、朔は苦笑するばかりだった。


「お前たち…羽目を外しすぎじゃないか?」


「なーに言ってんだ主さま!嫁も貰って雛も生まれてそして今日は祝言の日!こんなにめでたい日はねえ!」


「そうだそうだ!主さまもこっち来て輪に加わって下せえ!」


主賓のため遠方から来ている縁者たちの相手をずっとしていた朔だったが、凶姫にやんわり背中を押されて庭に下りると、大歓声が沸いた。


「あの悪戯小僧がなんと立派なことよ。主さま、雛の代にも必ず契約させてもらうぜ」


「ん、頼む。ちょっかい出す男が現れたらみんなで叩きのめしてやれ」


はははっと笑い声が上がり、次いで特大の徳利を手にした輝夜と天満が庭に下りると、女の百鬼たちがわっと駆け寄って来て独り身の天満に群がった。


「あ、ちょ…やめて下さい、触らないで…」


「お前は戦闘狂のくせに女と話す時は引っ込み思案になるからな。これからはそういうわけにもいかないぞ」


「はい…精進します…」


――綿帽子を取ってようやく足を崩した凶姫と柚葉を取り囲んだ息吹や如月たち女性陣は、そんな無邪気な笑顔の朔たちを酒の肴にしながら女だけで話に花を咲かせた。


「朔兄様や輝兄様だったら浮気の心配はないでしょうけど、万が一!万が一あったらすぐに言いなさいね、女総出で後悔させてやるんだから」


「はい!まずは私が兄様たちをこてんぱんにします!姉様たちご教示お願いします!」


きりりとした表情でぴっと手を挙げた朧に思わず雪男はぞっとしてはにかんだ。


「こわっ!程々にしてやれよなー」


「その前に!兄様たちは浮気なんてしません!私が目を光らせてますから!」


「朧さん、頼もしいっ」


ぱちぱちと拍手して盛り上がる女性陣に気付いた朔たちも雪男と同じようにぞっとしながらひそひそ。


「なんだかものすごく恐ろしい話をしている気がしますねえ…」


「こういう時は見なかったことにするんだ。関わるとろくなことがない」


「勉強になります」


ぺこりと頭を下げた天満の頭をくしゃくしゃしながら夜が更けてゆく。
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