嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
「おはよ、波琉。今日は来たんだね。良かったぁ…」



来た来た、朱比香様。


今日もばっちり化けてる。


もともと肌は白いのに、さらにそこにファンデーションを重ねて眉もきっちり、目もばっちりだ。


極めつけは、人を食っちまいそうな口。


今日は可愛らしく淡いピンクのリップだが、普段は真っ赤にしている。


その感じも百合野に似てるんだよな…。


…って、こんなに解説してたら勘違いされる。


オレ、ホントに興味ないから。


間違っても好きにはならない。


朱比香様は、学校1のいじめっ子だから。



内心焦っているオレをよそに、朱比香様は近くにいた女子を巻き込んで弾劾トークを繰り広げる。


オレは聞いているような聞いていないような、曖昧な反応をしながら身支度をした。



窓の外に広がる空は真っ青。


雲一つない空を鳥が群れて悠々と飛んでいる。



立ち上がって窓を開ける。


ブレザーを着ていると蒸し暑く感じるが、春風のおかげで少し涼めた。



…まさか


まさか、あれは…。



オレの目に、はっきりと映りこんだ。


窓際の列の後ろから2番目の席に座り、何かを食べている。


視力が裸眼で1.5という驚異的な良さを誇っているオレには、見えなくてもいいものまで見えてしまう。


箸の使い方が下手くそなのか、アイツはブロッコリー?をぽとりと床に落とした。


慌てて拾おうとするが、ひいていたランチクロスにアイツの胴体が触れ、かがんだ瞬間、弁当箱ごとアイツの背中に落下した。


アイツが悲鳴でも上げたのか、前の席で真面目に朝自習に取り組んでいた百合野が振り返って助けてやっていた。


アハハハハ…。


アイツ、ホントに女?


ってか、人間?


地球外生命体なんじゃね?



1人で朝の喜劇を鑑賞していると、突然怒号が飛んできた。



「ちょっと!波琉!聞いてんの?」



ヤバいヤバい。

 
朱比香様の機嫌を損ねたらタイヘンだ。



オレは窓を閉め、着席した。


かまってちゃんのお話は耳をそばだてて(声デカいからそんな必要ねぇな)聞いてあげなきゃならない。



「今日は一緒にお昼食べよ!あたし、楽しみにしてたんだから」



ああ、そうですか。


オレは今から憂鬱ですよ~。


久しぶりに登校したけど、なーんも変わんないんだな。

良くも、悪くも。



退屈な時間は長く感じる。


早く放課後になることを祈っていた。
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