嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
オレは海が好きだ。


暇さえあれば海に繰り出す。


海のない県で産まれ、周りが山と田圃しかない田舎で数年過ごし、幼稚園に上がるのをきっかけに都市部に出てきて、百合野と朱比香に出会った。


そんなオレにとって海はずっと憧れだった。


山がキライって訳でもなかったが、海に心惹かれて今日まで生きてきたのは、紛れも無い事実。



あぁ…気持ち良い…。


やっぱ落ち着くわ~。



肌をすり抜ける潮風に心を預ける。


1日の終わりに唯一心安らげる場所に来ることが、オレの生きがいだ。


ちょっと大げさか?


いや、でも、オレは海が好きだしな。


生きがいっつうのも別におかしくないな。



こうして1人海辺に佇んで夕日が沈むのを見届け、電車に1時間くらい揺られてボロアパートに帰る…。


それがオレのルーティーンになっていた。


それにしても今日の波は穏やかだ。


酷いときは離れていても足元まで水がかかってくるのだが…。



「波琉くん!」 



後方から聞き覚えのある声がした。


オレが知ってる女の中では、1番マシなヤツだ。



「よっ」



オレはいつも通り、軽く右手を上げた。



「波琉くん今日も来てたんだ」



「まあ、一応毎日来てる。ここが一番落ち着くから」



「えっ!毎日!?波琉くんって暇人?」



「暇人って、それ、オレに対して失礼だろ」



「あっ、ごめん!でも許してね。悪気はないの」



オレが許さないワケが無い。


自分で言うのもナンだが、オレはわりと寛容だ。


何にでもニコニコ笑って、良い意味でごまかす。


自分の心の内を他人に見せないように分厚い仮面を被っている。


それは昔から変わらない。



「ねえ。…返事…まだ?」



「ああ…。そう…、そのこと…、なんだけど」



沈む夕日はオレを待ってくれない。


与えられた宿題をオレはまだやっていなかった。




いや、





答えを出すのを頑なに拒んでいた。
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