嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
「ねえ!なんであたしじゃダメなの?!昴、教えてよ!」



朱比香に言いたいことは山ほどある。


でも言ったらますます機嫌を悪くし、彼女の周りの人間にまで被害が及んでしまう。


やんわりとたしなめるか、それとも…。



「あっ!スピキャンも昴もいる!!」



おっと、救世主登場!!


マンガだったら俺の目はキラキラ描かれているだろう。


天使が舞い降りて来たんだ。



「美湖ぉ!!あたし、振られた~」



泣きついた朱比香の頭を美湖は優しく撫でる。


まるで、飼い猫とご主人様のようだ。


呆れ顔の俺に気づいた美湖は気を利かせて、


「スピキャン、話は後でじっくり聞くから、とりあえず帰ろっか」


となだめながら帰り支度を手伝う。



「美湖、一緒に帰れなくてゴメンな。朱比香のこと、頼むわ」



「気にしなくて良いよ。美湖なら大丈夫だから。ホントだったら、仕事で今日会えなかったんだもん。昴の顔見られただけで嬉しい!」



「俺も美湖に会えて嬉しい」



素直に気持ちを伝えると、美湖は頬を紅潮させた。


完熟りんごとかってよく例えられるけど、美湖は違う。


美湖は、いちごとかさくらんぼとか、そういう小さな果物に例えた方がしっくりくる。


とちおとめ、とでも言っておこう。


美湖の頬はとちおとめみたいに真っ赤になった。



「ちょっとぉ、2人共のろけすぎ。あたしのこと、本当に考えてる?存在、忘れてるでしょ?!」



朱比香が噴火する前に、美湖はなんとか連れ出した。


ドアを閉める時、美湖の白くて小さな手のひらが小刻みに動いた。


俺も小さく右手を左右に振った。



大雨の後、道路のくぼみに出来る水たまりのようだなと自分を描写してみたのだった。
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