葵くん、そんなにドキドキさせないで。


それから、まだ掴まれている腕に視線を落とした。





「あ、あの……」


「……」





何にも言わない……。


この沈黙が気まずいし、何より、久しぶりに葵くんと話すから、緊張するよ。





「な、なんでまだ残ってたの……?」





沈黙に耐えられなくなってそう聞くと、ピクッと葵くんの肩が上がった。





「っ別に、たまたま」


「そっか……」





試験前の放課後は、とっても静かだ。


みんなすぐに家に帰って勉強するから。



だから、今いるこの教室だって静かで。



もしかしたら唾を飲み込む音だって、相手に聞こえちゃうかも。




……ドキドキいってる心臓の音も、聞こえちゃうかな?






「っ、あの、私、もう行くね?」


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