リボンと王子様
秘密を知られた日。
翌日。


ピーンポーン……。


午前十時を過ぎた頃。

私の部屋に玄関からの呼び出し音が響いた。


「お姉ちゃん、千歳くんだよ」


液晶モニターを確認して舞花が洗面所にいる私に声をかけた。

昨夜遅く、舞花と話し込んでいた私のスマートフォンに千歳さんからメッセージが届いていた。

舞花が遊びに来ているなら、改めて挨拶をしたいとの内容だった。

私の肩越しにメッセージを無断で読み取った舞花は、是非話したいと快諾し、今に至っている。


「千歳くん、律儀だよね。
何年も会っていなかったとはいえ、わざわざ挨拶したいだなんて。
……やっぱりお姉ちゃんの心配のしすぎじゃない?
確実に千歳くんはお姉ちゃんと真剣交際をしているつもりだと思うけど」


鏡ごしに舞花が呆れながら伝えてくる。


「……そうかなあ……私もまだ全部を話せないから……」


舞花と昨夜話しながら、有子おばさまにお手伝いさんを辞めることを申し出て、今までのことを全て千歳さんに話した上で気持ちを伝えようと決めた。


今、私が『好き』を伝えても嘘は解消されない。


瑞希くんの気持ちにもきちんと返事ができていない。

千歳さんのお見合いの話も詳細がわからない。

全てが手探りのような状況でもうこれ以上嘘を重ねたくないというのが私の本心だった。


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