リボンと王子様
「シャクナゲ」



落ち着いた、低い声が優しく響いた。


「へぇ、シャクナゲっていうんだ……あなた綺麗ね」


花を見つめながら、呟くと。

クスッと小さな笑い声が背後から聞こえた。

バッと振り返った私の目に。

恐ろしく整った容貌の男性の姿が映った。



「……花が好き?」


ジワリ、と耳に心地よく響く低音が男性の薄い唇から発せられた。

柔らかな笑みを浮かべて、私に一歩ずつ近付いてくる秀麗な顔立ちの男性。



近くのライトがぼんやりと彼の顔を照らす。

スーツ姿の大人の男性。

何処となく中性的で、驚く程に綺麗な顔立ち。

パーツのひとつひとつが繊細な彫刻のように整っていて。

男性に綺麗、は適切な表現ではないかもしれないけれど。

彼にはそんな言葉しか浮かばなかった。

切れ長のくっきりした二重の瞳は夜を切り取ったような漆黒。

スッと通った鼻梁。

男性にしては信じられないくらいキメの細かい綺麗な肌。

薄い唇。

無造作に軽く後ろに流した、だけど完璧に整えられた長めの黒髪。



ヒールの高いサンダルを履いた、身長百六十センチメートルの私より、頭ひとつぶんはゆうに高い身長に、細身の体躯。



その完璧なまでの姿に瞬きも忘れて見惚れてしまった。




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