宮花物語
失意の中で、自分の屋敷に戻ろうとした黄杏の目に、今度は、武術の稽古をしている紅梅の姿が写った。

ついこの前、他の妃に行くようにと仕向けろと言われ、それに従ったせいで、今こんなに苦しんでいる。

今だけは、会いたいくない。

黄杏は、紅梅に見つからないように、忍び足で戻ろうとした。


「こんな時間に、何してるの?」

だが黄杏は、あっさり紅梅に、見つかってしまった。

「……水を飲みに。」

「へえ。それでもしかして、井戸に行ったの?」

紅梅は、刀の素振りをしながら、次から次へと質問してくる。

「ええ……」

「お馬鹿さんね。そのついでに、見たくもないものまで見てしまって。」

黄杏は、紅梅のその言葉が、気になって仕方なかった。


「知っているの?」

「知ってるわよ。お妃になって、何年になると思ってるの?」
< 131 / 438 >

この作品をシェア

pagetop