宮花物語
将拓も、黄杏と信寧王が恋人同士であると、知った夜の事を思い出した。

「その上、紅梅を差し出せば、私は妃の父親として、もう政治に参加する事はできなくなる。」

忠仁は、そっと将拓を見つめた。

「そなたと、同じ気持ちだった。私は、娘を妃に差し出す代わりに、政治の表舞台から、身を引いた。その代り王の側にいて、生涯その御身を支えようと、決めたのだ。」

「忠仁様……」

忠仁は将拓の正面に、座りなおした。

「そなたが田舎で、妹君の為なら、命を差し出してもいいと言った時、私は他人事には思えなかった。今回の事もそうだ。自分の命が危ないと言う時に、黄杏様の事を一番に考えていた。それが、王の側近として、一番大事な要素なのだと、私は思う。」

「王の……側近?……」

将拓は、ゴクンと息を飲んだ。

「その目では、商売もなかなか難しいだろう。そなたは、政治としての才能もあるようだが、白蓮様の思惑通りになってしまった。」
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