宮花物語
第13章 国母の条件
爽やかな初夏の風が吹く頃。

王宮は、にわかに騒がしくなった。

「どうしたのかしら。」

黄杏が外を覗くと、それは向かい側にある、黒音の屋敷に人が出入りする音だった。

忠仁も、王宮付きの医師もいる。


「もしかして黒音様。ご病気なのでは。」

女人が、黒音の体調を気にする。

「もしそうだとしたら、大変ね。あなた、ちょっと行って確かめてみて。」

「はい。」

女人の一人に、様子を見に行かせた。

「大した事ではなければ、いいのだけれど。」

黄杏の心配を他所に、女人はあっさり引き返したきた。


「早かったわね。」

「それが……」

女人は、酷く混乱している。

「……黒音はもしかして、重い病気なの?」

「いいえ、そうでもなくて……」

はっきりとしない女人に、黄杏は勘が働いた。

「もしや……黒音に、お子が?」

女人は、焦りながら顔を上げた。

「まだ、決まった事ではありません。」
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