宮花物語
「紅梅は、おねだりさんだな。」

そんなつもりはないのに、耳元でそう言われると、恥ずかしくてたまらない。

だがそんな事は一瞬のことで、紅梅は直ぐに、女としての幸せを感じるようになる。

恋い焦がれた男が、今自分の目の前にいる。

その上、自分の体に欲情して、何とも言えない恍惚な表情を、浮かべている。

間近で香る、好きな人の匂い。


「王……」

紅梅は、王を強く抱きしめた。

「もっと、もっと……」

「紅梅……?」

「もっと……側に……」

訳が分からず、涙が出ていた。

それを王は、優しく拭った。


「……私は、いつも紅梅の側にいるよ。」

その言葉がウソだと分かっていても、紅梅にとっては嬉しかった。

そしてだんだん、王の息使いが荒くなってくる。

紅梅の気持ちも、高ぶってくる。


好きな相手が自分の体で、快楽に溺れている様は、何て美しいのだろう。

そう思うだけで、紅梅の心は満たされていくのだった。
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