宮花物語
第17章 誕生
そして月日は流れ、黄杏は産み月を迎えた。

「大丈夫ですよ、黄杏様。案ずるより産むが安しと申しますから。」

王宮付きの産婆が、黄杏に穏やかに、声を掛けた。

「はい。」


二度目の妊娠とは言え、一度目は残念な結果になった黄杏。

お腹の中の御子が、生きて産まれてくる事が、何よりも望みだった。


「元気に生まれてくるのであれば、姫君でもよい。」

毎晩添い寝する信志は、いつもそう、黄杏に言い聞かせた。

「周りは、特に白蓮が言う事は、気にするな。産まれてくる御子は、皆、宝に等しい。」

信志は、黄杏の体を撫でる。

「はい。その言葉、有難く頂戴いたします。」

自分が恋慕う相手の、御子。

それだけで黄杏は、幸せな気持ちになるのだった。


「ああ、いつ産まれてくるのであろう。」

信志は、今か今かと楽しみで仕方ない。

「もう少しでございますよ。」

黄杏も、お腹の御子が、産まれてくるが楽しみで仕方ない。
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