いつか羽化する、その日まで
「立川さん。気に障ったら悪いんだけど、無理に上着着てこなくても大丈夫だから。俺たちは、いくらクールビズとは言え必要な日もあるけどさ」
「はい、ありがとうございます」
毎日暑いし、と気遣った言い方をしてくれる小林さんは、やはり本当に素敵な人だ。
しかし、そう思うのと同時に私は少し落ち込んでしまってもいた。
確かに私は何も考えずに上着を着てきていていたし、小林さんから今の言葉を言ってもらえなかったら明日からもこの格好のままだったからだ。もしかして、こういうときは周りの空気を読んでクールビズにすべきだったのかもしれない。
すると、今まで何も言わずに先頭を歩いていた村山さんが振り返った。
「なんで僕が言うとセクハラ扱いで、小林さんだと紳士的とか言われるんですかね?
ーーねえサナギちゃん、世の中不公平だと思わない?」
「えっ」
突然入り込んできた明るい声に、私の思考はぷっつりと寸断される。夏の太陽は容赦なく日差しを降り注ぎ、村山さんの髪の毛を透けさせている。明るめの茶色い髪がきらきらと輝いてただ綺麗だなと思った。
「それは、村山が〝サナギちゃん〟とか平気で呼んでしまうようなところにあるんじゃないのか?」
そもそもそんな呼び方して失礼だろ、とまた小林さんが村山さんに小言を言っているけれど、私はそれどころではなかった。
(小林さんが私のことを〝サナギちゃん〟って呼んでくれた……!)