いつか羽化する、その日まで
・・・・・

「まったく、所長もひどいよね。何もあんな風に言うことないのに」


まるで僕に重大な問題があるみたいじゃん、とぶつぶつ文句を言いながら歩く村山さんの様子に思わず苦笑いが漏れる。


(……それは、もしかしなくとも日頃の行いが)

「……なにその顔。何か言いたそうだけど」

「いっ、いえ! 別に! 何も!」


続きのセリフを思い浮かべる前にじとっとした目線を向けられたので、気付かれないうちに慌てて否定しておいた。

ーー危ない。村山さんの特異能力で心の中を読まれるところだった。


駐車場までたどり着くと、村山さんは鍵を取り出して車のロックを解除した。私は小林さんの時もそうしたように後部座席に荷物を置かせてもらい、助手席に乗り込む。
シートベルトを締めながら、あれ、と違和感を覚えた。


「この車って、この前小林さんと出かけた車と一緒ですか?」

「いや、こっちは僕の管理している車。小林さんとは担当エリアが違うから、出かける時間が被るんだよね。やっぱりひとり一台は必要だよ」

「なるほど……」


全く同じ車種のようなのだが、小林さんの管理している車と村山さんが管理している車では車内の雰囲気が全然違う。私は、その雰囲気が違和感の正体だと気付いた。
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