いつか羽化する、その日まで

「サナギちゃん、今日、お弁当作ってきたんだって?」


佐藤さんに聞いたよ、と言われて顔を上げると、村山さんが柔らかい笑顔を見せていた。


「はい……大したものは作ってないですけど」

「いやいや、作ろうという気持ちが大事なんだよ。ーー見習えって散々説教されたからね」


肩をすくめる村山さんを見て、佐藤さんは本当に言ったんだと感心した。彼女なりに心配しているのだろう。


「それと、小林さんのことも話してなかったのか、って……」

「……」


トーンの落ちたその声に驚く。
村山さんは私の言葉を待っているのか、その後何も言わない。
私は気持ちを落ち着かせようと、コップの水をひと口飲んだ。


「いたんですね、彼女」

「……ごめん。隠してるつもりじゃなかったんだ」


村山さんは、はあ、とうなだれるように視線を下げた。はずみで前髪が揺れる。


「最初はすぐに教えてあげようと思ったんだけど。
サナギちゃん、小林さんに本気で憧れているみたいだったし、このまま知らない方がいいのかもって思い始めちゃって」

「遅かれ早かれ、知る運命だったんですよ。気にしないでください!」


私がフォローしようと明るく言うと、村山さんはどこか傷付いたような顔を見せた。


「いや、僕が全面的に悪いよ。午後サナギちゃんの様子がおかしかったのだって、それが原因でしょ?」

「……」

「本当、何やってるんだろうな……」

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