番犬男子




冷たかったはずのタオルは、とうにぬるくなっていた。


それなりに熱の取れた目元からタオルを外す。



カーディガンをあたしの肩にかけた雪乃に、手当てのお礼を言おうとして、口をつぐんだ。


雪乃が感涙にむせんでいて。



「ゆ、雪乃!?」


「チカちゃん、かっこいいわ。素敵よ。私がチカちゃんと同じ立場だったら、心が折れてたかもしれない。兄妹って、家族って、やっぱり素晴らしいわね!」



感激してる雪乃の背中をさすって、ポケットからハンカチを差し出した。



もう。

どうして雪乃が泣くの?


せっかく泣き止んだばっかりなのに、もらい泣きしちゃうじゃんか。




「千果も誠一郎も、自分のせい自分のせいっつってたけど、どう考えても親が悪ぃだろ」


「おまっ、きっぱり言いすぎだろ!もうちょっと空気読め!」



オブラートに包む気などさらさらない稜に、遊馬が「親も初めて子育てすんだし、間違えんのは当たり前だろ!」となぜかお父さんとお母さんのフォローをしてあげていた。



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