番犬男子





「また日本に来たら、たまり場に遊びに来いよな!」


「そん時俺らいるかわかんねぇけどな」


「ハッ、確かに!」



口をあんぐり開ける遊馬に、稜が肩をすくめる。



不意に自動ドアがスライドして、微風が侵入してくる。


遊馬の耳に今日も付いている、小さなルビーが施されたピアスが揺れると同時に、稜の前髪がほのかになびいた。



前髪の隙間から、情熱の色に彩られた左目が垣間見える。




「ま、事前に知らせといてくれさえすれば、遊ぶ約束できんじゃねぇの?」


「おっ!それは稜も遊ぶ気満々って捉えていい感じ~?」



意地悪そうな含み笑いをする遊馬の足を、稜が思いっきり踏みつけた。


今のは、稜をいじった遊馬が悪い。





みんな思い思いに、別れの言葉……じゃないものもあるけど、最後の会話を、相変わらず賑やかに伝えてくれる。


でも、たった1人、幸汰だけは、会話に参加せずに寂しげに俯いていた。




あたしは幸汰と、ぎりぎりの時間帯まで話したいのに。



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