番犬男子





「だ、だってさ、なんかわくわくしねぇ?」


「はあ?しねぇよ、アホか」



どう考えても、アホはいらねぇだろ、アホは。



稜はしねぇの?


なんつーか、こう、何かが始まる……いや、もう始まってる予感。



「わくわくできる状況じゃねぇだろ。能天気もいい加減にしろ」


「わかってはいるんだ。敵か味方か判断つかねぇやつが、どれだけ恐ろしいか、俺だってわかってる」



だけど。

ううん、だから。



「だから、楽しいんだろ?」



何が起こるか、予想つかない。



緊迫した中に潜む、怪しさと不穏と困惑と、それから。


わずかな、期待。



こんな感覚、久しぶりだ。


腹の底から、やる気が燃えてくる。



今、すごく、楽しい。



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