番犬男子
幹部室の角で、幸汰が淹れてくれているお茶の爽やかな香りが、鼻をかすめる。
今日は、ダージリンか。
「でも、まさか、セイちゃんに妹がいるなんてびっくりしたわ」
「雪乃」
刺々しく呼んだら、完璧な笑顔で返された。
俺のことを「セイちゃん」と呼ぶのは、こいつだけ。
その可愛すぎる呼び方には、いつまで経っても慣れやしない。
呼ぶのが雪乃じゃなかったら、ぶっ飛ばしてるところだ。
「妹なんかいねぇって何度も言ってんだろうが」
「そうだったかしら」
おい、とぼけんな。
「割と似てたけどな」
ボソッと、今まで無関心を貫いていた稜が、スマホ画面を見たまま呟いた。
珍しい。
こいつが、自分から会話に参加してくるなんて。