本当は苦しかったはずだ。

本当はつらかったはずだ。

なのに豪は小さいながらも我慢して、懸命に耐えていた。

表面では笑っているけれど、本当はつらかったのだ。

「何か困ったことやつらいことがあったら、いつでもあたしに頼っていいからね…」

そう言ったひかるに、豪は何度も首を縦に振ってうなずいていた。

この時、ひかるは気づいた。

自分は豪に恋をしていることに、ひかるは気づいた。

どこか大人びているのに、本当は強がりで弱いところがある彼に恋をしていることに気づいた。

豪を守りたい、豪の役に立ちたい――ひかるは心の底からそう思った。

彼が困っていたら手を差し伸べて、彼がつらい時は一緒に泣いてあげよう。

まだ子供だった自分はそれしか思いつかなかったけど、それで豪の役に立つことができるならばそれで満足だった。

 * * *
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