「ひかるさん」

「…はい」

「今日の服、とてもよくお似合いですよ」

「…ありがとうございます」

誰に対しても、そんなことを言っているのだろう。

そう心の中で呟いていたら、
「ひかるさんは特別ですよ」

伊崎が言った。

「えっ?」

言っている意味がよくわからなくて首を傾げたひかるに、
「ひかるさんは、僕が心の底からおつきあいをしたいと思った女性です。

だから、ひかるさんは特別なんです」

伊崎が言った。

「…そうですか」

それに対してどう答えればいいのかよくわからなくて、ひかるは一言だけ返事をした。

特別――伊崎は自分のどこにひかれて、自分のことを“特別”と言っているのだろうか?

(私が自分の周りにいないタイプの人間だから、そんなことを言っているのかな…?)

ひかるはそんなことを思いながら、伊崎と一緒に動物園へと足を向かわせた。
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