「ひかるさんは、動物園にきたことがありますか?」

「…小さい頃に祖母と1回だけきたことがあります」

お金持ちはこんなところにきたことがないんだろうなと、ひかるは思った。

「僕も、それこそ小さい時ですけれども家族ときたことがあります」

そう言った伊崎に、ひかるは顔を向けた。

「えっ、そうなんですか?」

意外だった。

てっきり、きたことがないんだと思っていたからだ。

「1回だけ父親の休みが取れて、家族3人で動物園へきたことがあったんです。

初めての動物園で楽しかったのはもちろんのこと、普段は忙しい父親が一緒でとても嬉しかったです」

そう話している伊崎の顔は当時のことを思い出したのか、笑顔だった。

「そうなんですか…」

呟くように、ひかるは返事をした。
< 40 / 115 >

この作品をシェア

pagetop