店のはずなのに、店員が誰もいないのはどう言うことだろうか?

そう思いながらレジの方に視線を向けると、銀のベルが置いてあることに気づいた。

そこに歩み寄ると、
「『ご用のある方はこのベルを鳴らしてください』?」

ベルの横にはそんな貼り紙が書いてあった。

試しに伊崎はベルを鳴らした。

チーン

「はーい」

鳴らしたら奥の方から声が聞こえたので、伊崎は驚いた。

奥から出てきたのは、黒髪ボブの女性だった。

「何かご用でしょうか?」

ぱっちりとした二重の目とソプラノの澄んだ声で、彼女が聞いてきた。

「えっ、えーっと…」

まさか人がいたことに、伊崎は戸惑った。

「そう言えば、初めて見るお客さんですね」

彼女が言った。
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