愛を知らない一輪の花

重い身体を引きづり駅前支店に着いた百合は、まだ誰も来ていない休憩室の椅子に深く座った。目を閉じ、昨日から今朝までの出来事を思い出す。

黙って出て来たことはまずかっただろうか。支店とはいえ、その場の流れで同じ会社の人間と一夜を共にした事に今頃後悔している筈だ。
遊びの相手はきっと沢山いる。

ここは自分から辞めるべきか、辞めさせられるのを待つべきか、悩んでしまう。

このまま仕事を続ければ蓮に迷惑を掛けてしまう。常にもっと上へと目指すあの力強い目を邪魔してはいけない。蓮は上に立つ人間だ。




行為は乱暴なものだったが、キスは優しく何度も抱きしめられた。今までに感じた事のない気持ちに戸惑いさえあった。そんな感情に慌てて蓋をした。


考えても仕方ない。とにかく、新しい就職先を見つけないといけない。

深く深呼吸をして立ち上がり、仕事に取り掛かった。
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