友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
まっすぐ続く道路を見つめる。
彼女は、およそ女性らしいところがない。
料理はできないし、掃除洗濯も適当だ。
ビールを片手にあぐらをかいて、
つまみの袋の中の小さなカスまで平らげる。
リビングのソファで俺を見て、大きな声で呼ぶんだ。
笑顔で。
その大きな笑顔で。
俺の名前を、呼ぶんだ。
琢磨は涙がこぼれないように、上を向いた。
10年後、ふとどこかで会うかもしれない。
「ひさしぶり」って、笑って。
「なにしてた?」
「幸せ?」って、尋ねる。
空白の日々に、その年月に、愕然としながら。
琢磨の頬に、涙が流れた。
これからの俺の毎日に、彼女はもういない。
広い空に、鳥が飛ぶ。
友達がいいとか、悪いとか。
全部を飛び越えて、今、感じるのは。
これから先の毎日に、日常に、彼女がいないなんて。
それがたとえ、嫉妬や憎しみに、汚いシミをつけられる日々でも。
それでも、1年後も、10年後も、そして命を終えるその瞬間にも、彼女の笑顔が見ていたいんだ。