友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

「あ、座ってください。そこ」

のぞみはソファへ女性を座らせた。

女性はソファを感慨深げに撫でる。

のぞみは冷蔵庫から、琢磨のペットボトルの水を取り出して、女性に差し出した。

「すいません。これしかなくて」
「ああ」

女性が優しく笑う。

「琢磨くんの好きなミネラルウォーター」
そう言った。

のぞみは手持ち無沙汰で、ビールを開ける。
ダイニングチェアに座って、ごくっと一口飲んだ。

女性は、のぞみとは正反対のタイプだ。
すごく女性らしく、線が細い。
綺麗に引かれたアイラインをみて、のぞみは無意識にタオルで顔をごしごしとこすった。

「あの」
突然、女性がはなしかけてきた。

「はい」
のぞみはビール片手に、女性の側の床にぺたんと座った。

「琢磨くんとはどこで?」
「同級生です」
のぞみは言う。
「最近偶然再会しまして」

「そう……」
女性は天井を見上げた。

「この部屋でいいの?」
そう言った。

「……最高ですけど?」
のぞみはわからず、またビールをゴクリ。

「だって、ここの家具は全部、わたしと琢磨くんが選んだのよ。最後にここにきた時と、何も変わらない」

のぞみの缶を握る指に、無意識に力がこもった。

「……へえ」
のぞみは笑顔を見せる。
「知りませんでした。センスいいですね」

女性がじっとのぞみの目を見つめる。

なぜか、胸がばくばくしてきた。

「あなた……」
女性がそう言いかけた瞬間、「なんで?」と声がした。
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