永く青い季節 〜十年愛〜
彼が車を運転する姿なんて見たことなかったな…
あの頃はまだ学生だったし…。
それだけ年月が経ったってことなんだな…
暫く普通に会話をして話が途切れると、流れゆく街並みに目を移す。
今、自分が座っているこの助手席には、いつも彼女がいて、こんなふうに彼と会話をして笑い合ったりするのだろう…
彼の横顔を時々盗み見しながら、そんなことをぼんやりと考えいた。
家の近くまで来て車を停めると、彼は私に聞いた。
「美織、さっきの山口さんって人、ふざけてあんな事言ってたけど…。本当に彼氏だったりする?」
「え〜?全然!あの人はお酒飲むと、いつもあんな感じなのよ」
「そっか…」
彼は、何か考えながら口ごもる。
「そういう幸の方は?この前、西田さんと話してた彼女とは、もう長いの?」
話の流れから口をついて出てしまった言葉だけど、返事はあまり聞きたくないかも…
そう思ってしまったら、僅かの沈黙に息が詰まりそうになった。