永く青い季節 〜十年愛〜
彼がサイドブレーキを外し、アクセルを踏んで車が動きかけた時、私は弾かれたように車に駆け寄り、窓を数回叩いた。
急ブレーキを踏んだ彼が、半分開けていた窓ガラスを全開にして、少し驚いた表情で私を見る。
「幸…。幸せになってね」
彼は真っ直ぐに私を見つめた後、ゆっくりと目を細めて、穏やかな笑顔を向けてくれる。
「ありがとう。美織も…絶対に幸せになれよ。
それと…一つお願いしていいかな…」
「…ん?何?」
「笑って。美織の笑顔、覚えておきたい」
私、今度こそ、うまく笑えたかな…
あの頃よりずっと大人になったから、きっと大丈夫…。