永く青い季節 〜十年愛〜




翌朝、目が覚めると、この数日間の幸せな時間はやはり夢だったのではないかと思った。
それでも、枕元のスマホを見ると彼からのLINEメッセージが入っていて、それを否定してくれた。

「今日からまた練習が始まる。美織もバイト代わって貰った分、連勤なんだろ?お互い頑張ろうな」

ほぼ毎日のように入るメッセージが、離れていても彼を身近に感じさせてくれる。


時々は声が聞きたくなって、電話で深夜まで話したりもした。

「いいわね〜今は便利な物があって。
私らの時代なんか、ケータイなんてなかったから、週に1回電話できればいい方よ。それまではジッと我慢。
しかも無料通話なんて有り難過ぎて羨ましいわよ。当時の遠距離電話なんて、すっごい勢いでテレフォンカードがなくなるのよ。ゆっくり会話を楽しむ余裕なんなかったもの」

父には内緒らしいが、遠距離恋愛経験者の母は、私達が夜遅くに長々と話していても、何も文句を言わず見守ってくれた。
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