永く青い季節 〜十年愛〜



ドアが閉まった直後、私は一生懸命笑ったつもりだったけど、それはきっとへんてこな顔になってたんだろうな…

可愛い笑顔は見せてあげられなかったけど、彼が多分見たことのない私の変顔で、暫く思い出し笑いでもしてくれたらそれでも良いかな…
なんて思えた。



帰り道、泣き笑いをしながら歩いていた私は、すれ違う人達から見たら、とても奇妙だったに違いない。


けれど、この涙は悲しい涙じゃない。
幸せ過ぎて、少し淋しくなっただけだ…

私は大きく息を吸い、両手の掌で頬を包み引き上げた。

そして、彼の面影が残る街を、顔を上げて歩いた。
< 57 / 145 >

この作品をシェア

pagetop