女性たちに告ぐ
看護師の記憶10

担当看護師に聞くと、例え一0日間でも、入院すれば患者のことを覚えているという。しかし、異動で消えた同僚のことは、「知らない」と言う。これいかに。

「ペテロは、三回知らないと答えるであろう(マタイの福音書)」

看護師同士、苗字で呼び合っていたから、名前で問われても「知らない」という。みんなに聞いても、同じ答えが返ってくる。

試しに、今ここの病棟にいる実在の看護師の氏名で尋ねてみた。
患者「美紀ちゃんを知っていますか」

担当看護師「知らなーい」

本当に、下の名前を知らないのか。信じられない。担当看護師の表情、眼の動き、瞳孔、心理的動揺などを読み取れなかった。

マスクをしているから、当然だ。下の名前は公表しない、看護師仲間で、そんな暗黙の了解でもあるのか。

昨年の看護師たちは、どこに消えたのだ? どこの病棟・科に移った。誰が、退職した。誰が結婚した。個人情報だから、簡単に教えるわけがない。

絶対に、知っているはずだ。それとも、俺に対するシットか。答えは、見つけられなかった。




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