【完】こちら王宮学園生徒会執行部
くす、と。
いくみさんが笑みをこぼす。そして。
「だって、いつみ」
ちらりとわたしの後ろへ視線を投げた。
つられるようにして振り返れば、スーツ姿でこちらに歩み寄ってくるいつみ。すこし距離はあったけれど、静かなこの場所では聞こえていただろう。
「話、終わったの?」
「ああ、終わった」
「そう。ならわたしは一緒に帰るわ。
南々瀬ちゃん、仕事がすこし落ち着いたら、予定どおり一緒に遊びに行きましょうね」
「え? あ、はい……」
ひらひらと、手を振るいくみさん。
それを何も言えずに見送って、歩み寄ってきたいつみがわたしの髪を撫でるのと同時に、彼女の言葉を思い出す。
「今、いくみさん一緒に帰るって言わなかった?」
「言ってたな。親と帰るんだろ」
「え、わたし最後にご挨拶してない……!」
抜けてきちゃったままなんですけど……!と。
慌てていたら、「たぶんもう車に乗ってる」と言ういつみ。彼の手には、わたしの貴重品が入っただけのバッグがあって。
「俺らも帰るか」
もしかしたら、お義父様とお義母様がわたしに気を遣わなくていいようにしてくれたのかもしれない、と思いながら。
こくりと頷くと、いつみがわたしの手を引いた。