【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「ねえ、いつみ」



「ん?」



「……だいすき」



伝えれば、優しく笑ってくれる。

一度庭から離れの中へともどり、それから女将さんたちに見送られるようにしてお店を出れば。



「着物だと疲れただろ」



「ちょっとだけ……」



車を呼んでくれていたらしく、停まっているそれに乗り込む。

抱き寄せてくれる彼にもたれかかるようにして目を閉じれば、纏めていた髪をほどいてくれて、さらりと肩を自分の黒髪が流れた。




「寝ててもいい」



「じゃあ、マンションついたら起こしてね」



「ああ。ゆっくり休め」



やわらかなその声を聞いたら、なんだか途端に眠くなってきてしまう。

予想以上に気を張っていたんだなと自分で自分の分析をして、朧な感覚に逆らうことなく身を委ねる。



薄らと目を開ければ、左手の薬指にはまだもらってから2ヶ月も経っていない指輪がはめられていて。

その手をするりと彼の腕に絡ませて、もう一度目を閉じた。



揺蕩うように、ゆらゆらと世界が揺れる。

ぬるま湯に浸かっているような曖昧な感覚なのに、徐々に心地良くなってきて、逆らうことなく眠りの中へと引き込まれていった。



目が覚めた時には、きっと……



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