【完】こちら王宮学園生徒会執行部
ふぅん、とつぶやく椛。
聞いた割に反応が薄いから、おそらくあまり興味がなかったんだろう。とはいえ、わたしも異国交流とやらにあまり興味があるわけではないけど。
生徒会長だから何かさせられるのかな、とぺらぺら書類をめくって目を通す。
内容はさておき、わたしも海外は好きだ。
金銭面に余裕があったのと、いずれ海外に移住することを考えて留学もさせてもらったし。
まあ1年で帰ってきちゃったんだけど。
なんて、思っていたら。
「ん……!?」
「……? どしたの、ナナ」
書類の中に引っかかりを覚えて、手を止める。
不自然に声を上げたせいか、みんなから不思議そうな視線を向けられてしまった。
「いや、その……
ちょっと、知ってる名前を見つけて」
「知って……?
ああ、南々先輩もともと留学してましたからね。その知り合いですか?」
「うん、そんな感じ」
にっこり笑って誤魔化してみたのだけれど。
"そんな感じ"ではない。
だらだらと、内心冷や汗が流れる。
そんなわたしの気も知らない椛は、書類を覗き込んで、「へえ」と何気なしにつぶやいた。そして。
「『柴崎 茉文(しばさき まあや)』って。
思いっ切り日本人混ざってるじゃねえの」
カタカナの並ぶ名前の中から。
よりによって、触れてほしくない名前を口にした。