【完】こちら王宮学園生徒会執行部



◆ Side夕帆



「……異国交流?

そんなの、去年まで行事になかっただろ」



大学内の、カフェテラス。

スマホから顔を上げたいつみは、相変わらず整った顔立ちを不機嫌そうにゆがめて俺を見る。



俺に話しかけられたことが気にくわないのか、教えたことに不信感を抱いているからなのか。

できれば後者だと思いたい。仮にも18年ともに過ごしてきた幼なじみに向けてその表情はないだろ。



南々瀬ちゃんと付き合ってから……いや。

高校を卒業してからさらに色っぽくなったような気がするけど、断じて大学生になったからだとかそんな理由ではないと思う。



まあ、絶対南々瀬ちゃん絡みだろうけど。



「だから、あた……俺も知らねえんだって。

今年から新しく取り入れる仕組みらしいぞ」



あっぶねえ。

思わず「あたし」って言いそうになったわ。




高校卒業と同時に、俺は女装をやめた。

でもどうしても兄弟で顔立ちが似てるからNANAの兄貴であることが見た目でバレそうだな、と思っていたら。



先に手を打ったのは夕陽の方で。

あいつは春休み中、グループ内で日替わりで書いてるファン向けのブログに、「実は兄貴がいる」ということを書いた。



しかも「美人な婚約者がいる」とまで補足してあったから、大学でNANAの兄貴だと知られても、変に声をかけられない。

これを見越したのか、それとも俺に巻き込まれるのが嫌だったのか。



定かではねえけど、夕陽のおかげで面倒な生活にならなくて済んだのは確かだ。

美人な婚約者、って書いたのを知ったいくみに、「あの夕陽がわたしのこと美人って言ったの!ねえ!ツンデレ!」とかはしゃぎながら頭撫で回されたらしいけど。



……ああ、そうそう。

俺は一人暮らしをはじめたし、夕陽は高校生になったことで高校生が主人公のドラマやら映画やらのオファーが来てるらしい。



要するに多忙で、両親との時間もとれない。

そうなれば、必然的に母さんが家にひとりになる時間が増える。



それが心配だから、と。親父が再婚という形を取って、家族にもどった。

というわけで、夕陽も高校入学と同時に名字は「女王」だ。



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