【完】こちら王宮学園生徒会執行部
その彼女であるいくみさんが押しかけてくることも多い。
夕帆先輩が住んでるからそっちに用事があるのかと思いきや、いつみ先輩に会いに来る。ブラコンはずっと健在だ。
いつみ先輩は相変わらず嫌そうだけど、4月はじめに誕生日プレゼントをしっかり渡していた。
一応、わたしといつみ先輩のふたりから、ということで。
個人で渡すほど仲が良いわけではないけれど、渡さないのも気がひける。
そんなわたしの心境を彼が汲んでくれた結果だ。
後日いくみさんが、わたしにわざわざお礼の連絡をくれた。
彼女が好きというロゼワイン。選んだのはいつみ先輩で、わたしはそれにメッセージカードを添えただけ。
なのにすごく喜んでくれて、今度一緒に出かけようね、という約束まで交わした。
それを聞いていたいつみ先輩に、『姉妹仲は良好だな』と言われて思わず照れてしまったのも記憶に新しい。
「俺はあいつの実家知ってるけど……
なんか、住んでなさそーってぐらい物ねーよな」
たしかに彼の私物は、必要最低限。
夕帆先輩曰く、「物が増えるのも買い物も好きじゃない」らしい。
……うん、よくわかる。
一緒に住んでいる今だからわかるけれど、いつみ先輩はそういうことに極端に関心がない。
そして彼はおそらく、かなりのめんどくさがり屋だ。
食べたいものがあったとしても、その手順を踏むのが面倒。それならすぐに食べられるこっちでいいや、と妥協するタイプ。
そこを改善してくれたら、何の心配もないのに。
「まあ、確かに先輩の物は少ないけど……
いまはわたしが物増やしてるから、一応生活感はあるんじゃない?」
「とか言いつつ、南々ちゃんが一人暮らしてた時も相当殺風景だったじゃねえの」
「……あれは海外に移住する予定だったからよ」
今はもう、そんな必要もなくなった。
それこそ必要最低限のものしか揃えていなかったけれど、今はもう普通の生活をしたって誰にも咎められないし。