【完】こちら王宮学園生徒会執行部

・ベサメ・ムーチョ








翌朝。

官僚たちの暴かれた不祥事でニュースは溢れ、それが明るみに出て本当に逮捕されるのも、いよいよ時間の問題だった。



これだけ噂になれば、仕事を辞めざるを得ないだろうし。

危ないことをしたいつみにはまだちょっぴり怒ってるけど、それ以上に感謝はしてる。



「警察には、例のセレモニーのことも話した。

……だから今後事情を聞かれる可能性もあるが、一応、国の危険に関わる話だからな。聞かれたところで公にはならねえのは仕方ない」



ダイニングで朝食を食べながら、いつみが言う。

それに「うん」と返して、スープマグの中身を軽くレンゲで掻き混ぜた。



「それはわたしも公にしなくていいと思う。

もし公になって、世界規模で何かあったら、それこそわたしたちは責任取れなくなっちゃうし」



「ああ。でもまあ、しばらくは落ち着くだろ」



手を伸ばしたいつみに指で頬を撫でられて、なんとなく気恥ずかしくなる。

それでも触れられているのが嬉しくて、すこしだけ擦り寄った。




「わたし、社長の話、ちゃんと受けるわ。

……少し前に受けるって決めたけど、昨日の件があって、今度こそしっかり覚悟決まったの」



「ああ。……好きにすればいい」



やわらかく笑ってくれるいつみ。

日常が慌ただしく戻ってくる。色々あったせいで、まだ落ち着かないことも沢山あるけど、頑張れそうだ。



「南々瀬。今日、俺実家行ってくるから。

すこしだけ夜遅くなる。……大丈夫か?」



「うん、平気よ。ご飯食べてくる?」



「いや、帰ってきてからにする。

一連の件が片付いたなら、お前と急いて結婚する理由がなくなったからな。……話をしてくる」



……そう、か。あの結婚には、やっぱりわたしが安全に暮らすための意味も込められていたのか。

薄々気づいてはいたけど、それならたしかに焦って結婚する必要はなくなった。



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