【完】こちら王宮学園生徒会執行部
ムッとして言い返したわたしに、彼は「ふぅん?」と意味ありげな視線を寄越してくる。
一体わたしのことをなんだと思ってるんだろう。
こんなにも心も身体も先輩に染め上げられてるのに。
……とは、さすがに恥ずかしいから面と向かって言えないけど。
「……今日は一緒に風呂入るか?」
「……は、い?」
「俺のもんなんだろ?
なら、俺の好きにしても文句はねえと思うけど」
不敵な笑みを浮かべたいつみ先輩。
彼の指先が伸びてきたかと思うと、するりとわたしのくちびるの横に触れる。
誘われているような気分になって、恥ずかしさが全身を巡った。
だけどそれ以上にしあわせだと思ってしまうんだから、本当に染まってしまっていると思う。
「南々瀬」
つっ、と。
動いた指先は、存外あっけなく離れた。
どうすることもできずにそれだけを視線で追えば、彼の指先についていたのはチキン南蛮のタレ。
どうやら、食べた際についたことにわたしが気づかなかったから取ってくれただけらしい。
……っ、ややこしい!
何かされるのかと思った自分が恥ずかしい……!
「何かされると思ったんだろ?」
ふ、と。
不敵な笑みをさらに深めた彼が、拭ったことで自分の指についたタレをぺろっと舐めた。
その姿でさえ色っぽいんだから、本当にやめてほしい。
わたしの心臓が止まったらどうしてくれるんだ。