【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「……思ったわよ。

お風呂一緒に入るとか、言い出すから」



いつもなら"そんなことない"と一蹴するところだけれど。

素直に認めてみせれば、彼がめずらしく押し黙った。それから漆黒の瞳が、ゆったりとわたしを捉えて。



「ふぅん?」



さっきと、同じセリフ。

なのにさっきと比べ物にならないくらい甘さを孕んだ視線と、ゆるやかに弧を描くくちびる。



見据えられただけなのに、背筋にゾク、と言いようのない痺れが走った。

……ま、まずい。どうしてこうなったのかはよくわからないけど、この状況はまずい。



「なら、その期待に応えるしかねえな」



「っ、ご飯中だから……!」




艶やかな色気を放出する姿に、なにか間違ったスイッチを押してしまったのかもしれない、と慌てて彼を引き止める。

不服そうだったけど"ご飯中"というワードのせいか、彼はすんなりといつも通りにもどってくれた。



だけどそれが諦めてくれたわけじゃなかった、と知ったのは。

ご飯を終えて食器を洗い終えてから、ソファに横になってごろごろするというプチ贅沢をしていたときのこと。



「いつ風呂入る?」



ソファではなく床に座ってパソコンに触れていた先輩が、振り返る。

後ろからこっそり彼を盗み見ていたこともあって、思わずどきりとしたけれど。



「……え、一緒に入るの?」



それよりも重要なことに気づいて声を上げれば、彼は「入るだろ?」と一言。

どうしてそんなにしれっとしてるんだろう。



というか、わたし入るなんて言ってないんだけど。

むしろ無理なんだけど。



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